1. インド特許法上発明と認められないもの(化学)
既知の物質の新たな形態で、既知の効能の増進に寄与しないものは、法上の発明とは認められない(例えば、とある物質の塩、エステル、エーテルや多形体等は、効能の観点から特異的な物性を有しない限りは同一の物質として扱われる)。
組成物に係る発明の場合、成分同士が相まって相乗効果をもたらすことを示さない限り、当該組成物は法上の発明とは認められない。
2. 情報提供義務(8条)のタイムライン
8条(1)(a)
インド出願時に、既に発生している対応する諸外国出願等があれば、当該インド出願と同時に又は当該インド出願から6月以内に情報提供をしなければならない。
8条(1)(b)
インド出願後に、対応する諸外国出願等が発生した場合は、それぞれの外国出願の日から6月以内に情報提供をしなければならない。
(※8条(1)の場合、嘆願書の提出により、6月の期間の経過後でも情報提供を行うことができる場合がある。また、8条(1)の場合、インド出願から特許査定に至るまでの期間の全ての情報を提供しなければならない。8条(1)で規定する情報には、継続出願や分割出願の情報も含まれる。)
8条(2)
インド特許庁から通知により求められた場合は、諸外国出願等に関するより詳細な情報(例えば、サーチレポート、拒絶理由通知、補正書等)を、同通知のあった日から6月以内に提供しなければならない。
3. その他
インド特許法における2種類の公報
①P1 Publication
優先日又はインド出願の日のうち、いずれか早い日から18月経過後に発行される(出願公開公報)。P1 Publicationの発行から特許査定のまでの間に、何人も査定前異議申立を請求することができる。また、P1 Publicationの発行は補償金請求権発生の要件でもある。
②P2 Publication
特許査定後に発行される公報(特許掲載公報)。P2 Publicationの発行後に、利害関係人は査定後異議申立を請求することができる(査定前異議申立と査定後異議申立の異議申立理由は同一である)。
審査に要する期間
最初のOA(FER)から6月の期間(3月の延長可)内に特定査定を行なうのが原則であるが、最近の主流としては、FER後にHearing(聴聞会)を開き、アクセプタンス期間の経過後に特許査定がなされることもよくある。インド出願時に審査請求をした場合、約2年から2年半の期間で特許査定がなされる。
商業的実施の報告
かつては暦年(Calendar year)ごとに、インド国内における特許発明の商業的実施に関する報告を提出しなければならなかったところ、施行規則の改正後は、事業年度(financial year(4月1日始期))ごとに提出する規定となった。商業的実施の報告は、特許査定直後の事業年度からの提出が求められる。事業年度の満了前6月の間に提出可能(毎年の9月末まで)。
※たとえインド国内で特許発明の商業的実施がなかったとしても、「商業的実施の報告」そのものは提出しなければならない。
以上
筆:弁理士 王 稔豊盛